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2018-09-01

腰痛-事実とフィクションを区別する

オーストラリア Curtin University の Peter O’Sullivan教授

腰痛についてわかっていることは、深刻な場合は1%しかないということです。
例えば腫瘍、骨折、炎症性疾患などです。

そして、椎間板突出といった、神経の圧迫が関与している場合はたったの5%です。

90〜95%の腰痛では、画像による診断ができません。

しかし、現在われわれが抱えている問題は、50年前であれば腰痛症や腰痛、腰椎捻挫と呼んでいたものが、今では非常に感度の高いMRIのような機器があるため、ほとんどの人に存在している、いわゆる「異常所見」を見つけてしまうのです。

脊椎をスキャンすれば、90%の人で椎間板が変性しています。また、45%の人で椎間板は膨隆・突出しており、20〜30%の人で椎間板の突出や線維輪の断裂、椎間関節炎などがみられます

ですから、5%のケースを同定するために、腰痛はこれらの異常所見によって引き起こされているという大規模な信仰を我々は患者に対して作り出してしまったのです。

しかし、これらの所見は実際には正常で、腰痛を予測する因子ではありません。

それで何が起こったかというと、「損傷した組織」によって腰痛が起きているという信仰を我々は作り出してしまって、脊椎が損傷しているかのように治療を行なっているのです。

患者に「腰を大事にして真っすぐ保って。物を持ち上げるときは気を付けて。コアマッスルを鍛えるように。」と指導しているのです。
しかし、痛みのある患者はこれらをすでに行なっています。

我々は、腰痛は結局のところ組織の状態によるという信仰体系を作り上げてしまったのです。

これまで痛みという症状を治療することに重きが置かれてきましたが、それはあまり効果をあげていません。

問題の原因については、もっと複雑であるということがわかってきました。
腰痛の原因は様々ですが、その一つとしていわゆる末梢の要素があります。
例えば、異常な筋緊張や防御的筋収縮、硬くて防衛的な姿勢や運動パターンによって痛みに敏感になっている組織にストレスがかかります。

そして、ストレスに関連した因子と絡み合って、強いストレスを抱えるようになったり、不眠症になったり、うつや不安で苦しんだりするのです。
そして、それらの因子は脳の増幅作用に影響を与え、脊椎の組織を敏感にするということがわかっています。

そして、我々は最悪の状況を作り出してしまったのです。
つまり、スキャンをして関節がすり減っていると言われれば、それは患者にとって、腰がボロボロになっていて、動かす度に時間をかけてすり減っていくということを意味しているのです。

患者はとても心配になるわけです。
腰を守るようになることで、痛みに敏感になった組織にストレスがかかるようになり、彼らの人生にとって意味のある活動をやめてしまい、身体を動かすのが怖くなることで、健康に大きな影響を及ぼします。

患者は恐怖心のために今まで行なっていたことができなくなり、アドバイスされたことによって問題が悪化してしまうのです。

我々の研究グループのメンバーであるIvan Linは、最近 British Journal of Medicine Open に論文を発表しました。その論文によると、腰痛による機能障害は医原性、つまり医療システムによって引き起こされているということがわかりました。

この2〜3日間で我々が出会った患者のように痛みが損傷もなく始まって、様々な治療を求めて、「椎間板が損傷していて、ここがすり減っている」「神経が圧迫されている」「腰を曲げる時ときは注意したほうがいい」「コアマッスルを使って」「動くときは身体を固くして」といった様々な助言を受けて、うつになり、不安や恐怖心が強くなり、物事を避けるようになって人生が落とし穴にはまったようになってしまうのです。

痛みを抱えている患者はこう言うでしょう。
「人生が止まったような状態だ。なぜ痛いのか理解できないし、痛みをコントロールできないし、人生に意味をもたらしていたことができなくなってしまったから。」と。

一般的に信じられているのは、慢性腰痛は治らないもので、患者が状況を受け入れて、人生に価値を与えていたことをもう一度行なって人生を有意義に過ごせるように助言を与えることで患者の機能障害を軽減させることしか我々にはできない、というこです。

少数の患者にとってはそれが正しいかもしれませんが、大きな改善のチャンスがある多くの患者を見失うことにもなりますし、医療従事者はそういった考え方を変えるべきだと思います。

つまり、「腰が損傷している」という考え方をやめて、「痛みと組織損傷は同義ではない」「運動は身体に良い」「患者がふつうに動いて腰のことを信頼できるような自信とストラテジー(計画や知識などを含んだ方針)を与えるべきである」と考えるべきです。

また、理学療法士を含めた医療従事者は、「腰痛がする減っている、椎間板が変性している、膨隆している」と表現するのをやめて、これらの変化は正常であるということを患者に伝えて、痛みに関する考え方を改めるべきです。

 

 

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